炎上花嫁の逆襲 ~結婚式を壊した“自殺少女”の正体、私がすべて暴いてあげる~

炎上花嫁の逆襲 ~結婚式を壊した“自殺少女”の正体、私がすべて暴いてあげる~

猫又まる · 完結 · 29.6k 文字

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紹介

誰もが、私を怪物だと言った。

結婚式の日。純白のドレスに身を包んだ私の隣で、婚約者が叫んだ。
「止めてくれ!女の子が橋から飛び降りようとしている!」
けれど私は、運転手に告げたのだ。
「――車を出して」と。

町中の人々が見ていた。私が人の命より、自分の結婚式を優先した瞬間を。
SNSは瞬く間に炎上し、「#冷酷花嫁」というタグが世界中を駆け巡った。
義母になるはずだった人さえ、私を化け物でも見るかのような目で見ていた。

――でも、もし。
私だけが、彼らの誰も知らない“真実”を知っていたとしたら?

あの「自殺の少女」が、自己紹介もされる前から、私の婚約者の名前を知っていたとしたら?
彼女の出現のタイミングが、あまりにも完璧すぎたとしたら?
彼女の危機が、あまりにも都合よすぎたとしたら?

そう、狂っていたのは私じゃない。
私は何か月も前から、あの女を監視していたのだから。

悪女?怪物?結構じゃない。
全世界が私を断罪するこの舞台で、たった一人、完璧な復讐劇を始めてあげる。

チャプター 1

 公園の小さな木製キャビンにある姿見の前に、私は立っていて、鏡に映る自分を見つめた。真っ白なレースのウェディングドレスは体にぴったりと合い、母の真珠のネックレスが窓から差し込む陽光を捉えてきらめいた。

 外では、スタッフが準備を進める音が聞こえる。椅子を並べる音、音響機材をテストする音。すべてが計画通りに進んでいた。

「結希ちゃん……」

 戸口から聞こえた浅野春美さんの声は震えていた。振り返ると、未来の義母となる彼女が目に涙を浮かべて立っている。淡いブルーのスーツを身にまとい、その手には小さなかすみ草の花束が握られていた。

「本当にきれいよ、結希ちゃん」

 春美さんは私の方へ歩み寄ると、優しくベールを直してくれた。

「安樹があなたの姿を見たら、きっと泣いてしまうわ」

 浅野春美さん。この二年間、彼女は私の実の母親よりもずっと母親らしかった。安樹の大好物の作り方を教えてくれ、私が病気のときにはスープを届けに来てくれ、私のコーヒーの好みをいつも正確に覚えていてくれた。

 今日のこの日を完璧なものにしてくれるものがあるとしたら、それは彼女が私を認めてくれているという事実だった。

「本当にそう思いますか?」と私は尋ねた。急に、心細い小さな女の子になったような気分だった。

 春美さんは両手で私の顔を包み込んだ。その温かい、母親のような感触。

「結希ちゃん、あなたは外見が美しいだけじゃない。優しくて、賢くて、強くて……息子が見つけてくれたらと私が祈っていた、そのすべてをあなたは持っているわ」

 彼女はハンドバッグに手を伸ばし、小さな箱を取り出した。

「祖母から譲り受けたものなの。……何か、古いものを、って言うでしょう?」

 中には、小さな薔薇の彫刻が施された、繊細な銀のブレスレットが入っていた。

「春美さん、いただけません――」

「いいのよ、受け取ってちょうだい」

 彼女は優しく私の手首にそれを留めてくれた。

「あなたはもう、本当の意味で私の娘になるのよ、結希ちゃん。ずっと娘が欲しかったの」

 娘。本気でそう思ってくれているのだろうか。こんなふうに無条件で受け入れられた経験は、今まで一度もなかった。実の母はいつも、もっとこうすれば良くなるのにと指摘し、何かにつけて批判するところを見つけていたから。

 けれど春美さんは、私がすでに完璧であるかのように見つめてくれた。

 ウェディングカーがゆっくりと公園の駐車場を出ていく。私は後部座席で、付き添い役の倉持早苗と春美さんの間に座り、両親が前の席にいる。誰もが興奮した様子でしゃべっているけれど、私はただ微笑んで、この瞬間を胸に刻みつけていた。

「安樹が初めてあなたを家に連れてきたときのこと、覚えてる?」と春美さんが笑った。

「あの子、すごく緊張してて、物を落としてばかりいたの。そのときすぐに分かったわ。あなたが特別な人だって」

「グラタン皿を丸ごと落としましたよね」と私も笑みを浮かべて言った。

「うちのキッチンの床一面にね!」

 春美さんは手を叩いた。

「でもあなたはただ笑って、片付けを手伝ってくれた。そのときよ。この子こそ、あの子にぴったりの人だって確信したのは」

 倉持早苗が身を乗り出して、私のブーケを直してくれた。

「あと十分で、あなたも浅野さんね!」

 車の窓から、見慣れた緑渚町の通りが過ぎていくのを眺めた。私の故郷、ご近所さんたち、この町。今日の結婚式のことは、誰もが知っている。昨日、スーパーの渡辺さんが頑張ってねと声をかけてくれた。郵便配達員さんには、わくわくするかい、と尋ねられた。

 これだ。これが私のハッピーエンド。誰もが顔見知りのこの小さな町で、私は運命の人を見つけた。浅野安樹と私は、これから一緒に素晴らしい未来を築いていくのだ。

 春美さんがくれたブレスレットに目を落とすと、胸に温かいものが込み上げてきた。春美さんがお義母さんになってくれるなら、私たちの子供たちは最高のおばあちゃんを持つことになるだろう。

 スマホがメッセージの受信で震えた。お祝いを送ってくれる友人たち、遅れてくるゲストからの道順の問い合わせ。すべてが完璧だった。

「あ、見て」と倉持早苗が窓の外を指さした。

「旧水車橋、この光の中だとすごくきれい」

 私は外に目をやった。石造りの橋は実に美しく、午後の陽光が水面に踊る穏やかな川に架かっている。ここは私たちが緑渚町の披露宴会場へと向かうために選んだルートの一部だった。

「安樹がプロポーズしたのは、ちょうどあそこよ」と春美さんが橋を指さして言った。

「全部話してくれたわ。どれだけ緊張していたか、あなたがどんなに泣いていたか……」

「嬉し涙です」

 私は婚約指輪に触れながら付け加えた。

「幸せの涙ね」と春美さんも同意した。

 橋に近づくにつれ、運転手の加藤真さんがスピードを落とした。後ろには、安樹の付き添い人たちや親戚、家族ぐるみの友人たちが乗った車列が見える。皆が私たちの後について披露宴会場へ向かっている。

 あと十五分で着く。安樹は湖畔に設けられた会場で待っているだろう。山崎牧師が私たちの結婚を執り行い、そして私たちは夫婦として幸せのキスをするのだ。

 しかし、橋に近づくにつれて、私の胃がずしりと落ち込むような光景が目に飛び込んできた。

 橋の上に人影があった。白いドレスを着た若い女が、石の手すりに腰掛け、下の川に向かって足をぶらぶらさせている。

 心臓が止まった。

 白鳥日菜だった。

 いや。今日だけは。今だけは。彼女がどうしてここにいるの?

「うそでしょ」と倉持早苗が息をのんだ。

「あの子、飛び込むつもりじゃ……」

 春美さんが心配そうに身を乗り出した。

「加藤真さん、スピードを落として」

 でも私には分かっていた。これが一体何なのか、正確に。

「運転を続けてください」

 私は加藤真さんにきっぱりと告げた。

「でも結希ちゃん――」と春美さんが言いかけた。

「運転して、加藤真さん。止まらないで」

 フロントガラス越しに、白鳥日菜がこちらに向かってくる車列に顔を向けるのが見えた。この距離からでも、完璧に施されたメイクと、丁寧にセットされた髪が見て取れる。

 彼女の白いドレスは破れても汚れてもおらず――まるでたった今着たかのように、真新しかった。

 彼女はこれを計画したのだ。私たちがここを通り過ぎなければならないことを知っていて、この瞬間の、この場所を正確に狙ったのだ。ずっと見ていて、タイミングを完璧に計っていた。

 倉持早苗が私の腕を掴んだ。

「結希、あの子を助けなきゃ!」

「いいえ」

 私の声は意図したよりも硬く響いた。

「その必要はないわ」

 しかし加藤真さんはすでに車を減速させており、その顔には心配の色が浮かんでいた。

「お嬢様、やはり――」

「運転を続けてと言ったでしょう!」

 だが、もう遅かった。

 私たちの後ろから、車列の二台目――安樹と彼の付き添い人たちが乗った車――が横に並んできた。助手席に座る安樹の姿が見える。まだスーツ姿で、その表情は鋭く、集中している。

 彼の車の窓が下がった。

「結希?どうしたんだ?」

 私が答える前に、彼の視線は橋の上の白鳥日菜を捉えた。彼の雰囲気が一瞬で変わった。私がよく知っているあの表情――消防士としての本能が作動したのだ。

「なんてことだ。加藤真さん、車を止めて。車を止めてください!」

「安樹、やめて――」と私が言いかけた。

 しかし彼はすでに二台目の車から飛び出していた。車が完全に止まるのを待つことさえしなかった。

「動くな!」

 彼は白鳥日菜に向かって叫んだ。その声には、危機的状況の訓練を受けた者だけが持つ威厳がこもっていた。

「動かないで!大丈夫だから!」

 これだ。これが彼女の狙った瞬間。彼女は彼を、まさに望み通りの状況に置いたのだ――ヒーローモードで、完全に彼女だけに集中させ、私たちの結婚式の参列者全員を観客にして。

 春美さんが私を見た。その目には明らかな困惑が浮かんでいる。

「結希ちゃん、どうして車から出ないの?あのかわいそうな子、助けが必要よ!」

「彼女に必要なのは助けじゃありません、春美さん。注目です」

「なんですって?」

 春美さんの声は衝撃に満ちていた。

「結希ちゃん、本気で言ってるの?人の命がかかっているのよ!」

 私はようやく車から降りたが、助けるためではなかった。橋から二十メートルほどの距離で、落ち着かせるように両手を挙げている安樹の方へ歩いていった。

「安樹、車に戻って」

 彼は振り返りもしなかった。

「結希、110番をお願い。危機管理交渉班の出動を要請しろと伝えろ」

「車に戻ってって言ってるの」

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